
ルーブル美術館にあるソクラテスの肖像(1世紀ローマ)。こちらから転載させて頂きました。
本シリーズでは科学技術教育についての論考を進めています。
前回は継続的に実践されているソクラテス対話法教育(中学生向け)の二例を紹介し論考しました。今回は別の二例を見てゆきます。今回も調査してくれたのはGROKさんです。
3)フィンランドのSTEM教育「Luma Centre(科学教育推進センター)」プログラム
「STEM: Science, Technology, Engineering, and Mathematics」「Luma: luonnontieteellis-matemaattinen (自然科学、数学)」
フィンランドのLuma Centreが提供する中学生向けSTEMプログラムで、ソクラテス対話法を継続的に活用しているそうです。継続性としては、学期ごとのSTEMキャンプや年間のクラブ活動で、ソクラテス対話法を毎回使用するのだそうです。
テーマ例としては、「持続可能なエネルギー」「ロボットプログラミング」などが挙げられるそうで、対話型ワークショップではテーマに関する質問を投げ掛け、生徒はグループで仮説を議論するとのこと。
また、実験と対話の繰り返しを通じて、成否にかかわらず試行錯誤を促すそうです。また、年間プロジェクトを設け、一テーマについてソクラテス対話法で仮説・実験・結論を繰り返すのだそうです。
成果としては、生徒の科学的探究心と問題解決能力が向上したそうで、Lumaの評価で、参加生徒のSTEM分野への進学率が非参加者に比べ20%高く、国際科学コンテストでの受賞例も増加したそうです。
中学生向けの工夫としては、ゲームやプロジェクト形式で、楽しみながら考える環境を作るとともに、身近な問題(例: 地元のエネルギー)を取り入れ、関心を維持するなどが挙げられるとのこと。教師や科学者がファシリテーター(会議やワークショップなどの場で、参加者間のコミュニケーションを円滑にし、議論を促進する役割を担う人のこと)として対話を導き、生徒の自信を育てることも行うそうです。また、生徒の思考力の成長を継続的に追跡し、フィードバックを提供しているとのこと。
4)日本の公立中学校「総合的な学習の時間」での環境教育
日本の公立中学校(千葉県や神奈川県のモデル校など)で、総合的な学習の時間を使った継続的な環境教育カリキュラムが2010年代以降に実践されているとのこと。継続性としては、1年間(週1回、年間30週程度)で、環境問題をテーマにソクラテス対話法を活用しているそうです。
テーマ例としては 「地域のごみ問題」「再生可能エネルギーの導入」などが挙げられるそうで、毎週の対話として「ごみを減らすには何が必要?」「リサイクルがうまくいかない理由は?」などの質問を投げ掛け、生徒がアイデアを出し合うとのこと。地域のごみ処理施設を見学後、「なぜ分別が必要?」「分別しないとどうなる?」と問い掛け、フィールドワークと対話を通じてシステム思考(?)を促すのだそうです。
1年間で「学校のごみゼロ計画」を作成し、ソクラテス式質問(「この計画の課題は?」「成功の基準は?」)で計画を洗練させるとのこと。中学生向けの工夫としては、地域の問題を取り入れ、身近さでモチベーションを維持させるのだそうです。また、グループプレゼンやポスター発表で、対話の成果を(グループ内で?)共有させ、教師が生徒の意見を否定せず、質問で導く姿勢を徹底するそうです。また、生徒の思考の進展を学習ポートフォリオ(「学習状況や成長の記録」という意味らしい)で記録し、継続的なフィードバックを提供するとのこと。
教師のトレーニングとしては、ソクラテス式質問の設計やファシリテーションを教師が継続的に学び、質を維持するのだそうです。また、中学生の特性考慮して、興味を持続させるため、視覚的・体験的な活動を多く取り入れ、質問をシンプルかつ刺激的にするとのこと。
フィンランドのLumaプログラムは、科学技術的要素が含まれていて、生徒個人の成長を評価するペーパーテストではない方法が光ります。ただ、これが全国的な規模の取り組みなのか、Luma Centreにアクセスできる中学生のみに提供されるプログラムなのか不明です。
日本の環境教育については、STEM要素があまり見出せず、見掛けは「社会科学体験」という印象です。「環境」という今日的な題材を利用していますが、生徒の知性の育成という観点の有無がよく分かりません。
私の理解が浅いのですが、「今日的な課題でないと興味が続かない」というのは現在の中学生年代の共通特質なのか、と疑問を持ってしまいました。時として、「今日的」は「本質から遠い」ことがあります。「クラシカルで身近なもの」の方が生徒の継続的なアプローチを容易にするようにも思えます。
このシリーズはこちらに続きます(新しく投稿されるとそちらに飛びます)。また、このシリーズの第一回目はこちらです。
コメントを残す