
宮崎実験線で用いられていた超伝導磁石。保冷装置が目立ちます。現在はいくつかの変更が加えられているようです。こちらから転載させて頂きました。
前回はリニア中央新幹線の「交通機関としての特異性」を論考し、発展性に疑問を呈しました。
線路であるガイドウエイが従来の鉄輪式線路と比較して非常に複雑であり、その複雑さにリニア新幹線の運行が強く依存しているという点が障害にならないかと考えました。
今回はリニア新幹線の技術の最重要点の一つである超伝導磁石について論考してみます。
標題のクエンチ(quench)とは焼けた鋼を水や油につける「焼入れ」のことです。超伝導磁石では、何らかの原因により超伝導が常伝導となってしまい、突如としてジュール熱が大量発生し冷却用の冷媒が爆発的に蒸発する事態のことを言います。
実は約40年前に東京の繁華街の中心で、液体ヘリウムで冷却された超伝導磁石を用いて実験研究を実施した経験があります。結果は大失敗でしたが、、。
その時の実験設備にあった注意書きが「絶対にクエンチさせないでください」でした(笑)。高価な超伝導磁石が損傷するというのがその理由でした。
さて、以下ではまず超伝導磁石の基礎を簡単に説明します。
超伝導とは極低温で導体の抵抗値がゼロになる現象です。
この状態では導体に電流を流してもジュール熱(抵抗値の二乗に電流値を掛け算した値の熱が発生します)は生じません。
従って、熱を発生させることなく大電流を流すことができます。ただし、電流値には限界があります。
他方、コイルは電流を流して磁界を発生させる部品です(大型のものは装置と呼びます)。
コイルを超伝導体で作ると発生磁界を大きくすることができます。ただし、コイルは極低温に冷却しておく必要があります。
極低温の環境は簡単には実現できません。
家庭用冷蔵庫の製氷室の温度はマイナス20度C程度らしいのですが、私が実験した頃の超伝導磁石の冷却温度はマイナス269度Cでした。
最近の技術的進歩により冷却温度は上昇傾向にあるようですが、、。
リニア新幹線で用いられている超伝導磁石の規格は以下のようです。
超伝導電磁石のコイルは、ニオブチタン (NbTi) 合金系の極細多芯線を銅母材に埋め込んだもので、コイル内を流れる電流は700A程度。超伝導磁石は外部からの熱進入を抑えるため液化ヘリウム(-269℃)の入った内槽容器内に設置し、その内槽容器の外側には液体窒素で約77K (−196℃) に冷却された輻射シールド板が設けられる。内槽容器は外槽容器に覆われ、両者の間は熱絶縁に優れた真空状態が保たれる。
今夏7月に試験投入された車両(M10)では液体ヘリウムが不要な構成となっているようですが、果たして、、、。
ちなみに、私が40年前に実験研究で用いた超伝導磁石の素材はニオブスズ(Nb3Sn)でした。こちらの方がより高強度の磁界を発生できるようですが、高価なためニオブチタンが一般的な応用には用いられるようです。
次回はクエンチのメカニズムの説明を試みます。
このシリーズはこちらに続きます。また、このシリーズの初回はこちらです。
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