acd025: 世界の科学技術アカデミー 番外編その2 (25) イギリスとの比較

ローマ帝国のカエサル。グレートブリテン島に侵入。こちらから転載させて頂きました。

このシリーズでは世界の様々な科学技術アカデミーを紹介してきました。

前回の番外編では「幕末に至るまで日本に科学技術アカデミーが無かったとするのは何故か?」について論考し、その理由を以下のように推論しました。

ア)古来、「(思想と)科学技術は中国から渡来するもの」という固定観念が強すぎて、「自ら開拓するのではなく果報は寝て待つ」がDNAに刷り込まれてしまった。
イ)海に囲まれた地政学的要素のために国防に科学技術を利用する考えが為政者に薄かった。
ウ)江戸時代の地方分権政策が強すぎて、各藩の科学技術アカデミーの規模が不十分だった。
エ)実は科学技術アカデミーは存在していたが、歴史修正主義者が権力を握ったために、何らかの理由で歴史から消されてしまった。
オ)インド式(≒仏教式)の徒弟制度が十分に機能していたのでアカデミーが不要だった。
カ)その他

このうち、(イ)についてはイギリスも「海に囲まれた国」だったと思い出しました。イギリスを分析すると日本の特殊性の深掘りができるのではと考え、今回はそれを試みました。

イギリスも海に囲まれた国ですが、有史以来、海外から何度も侵略されています(※)。
※)ドーバー海峡と対馬海峡とを「渡海の難易度(古代)」でGROKさんに比較してもらったところ、後者の方が容易との回答でした。別の要因があったのかも知れません。

まず、グレートブリテン島には紀元前9世紀頃から紀元前5世紀頃にかけてケルト系民族が侵入してきて、鉄器時代が始まったそうです。

次いで、紀元前後にローマのユリウス・カエサルやローマ皇帝クラウディウスによりブリテン島の大部分がローマ人によって征服されます。

ゲルマン民族の大移動で西ローマ帝国が滅んだ頃(5世紀)、ゲルマン民族の一派のアングロ・サクソン諸部族がブリテン島南東部を征服します。

10世紀にアングロを名前の由来とするイングランド王国が成立しますが、11世紀にはデンマークの北海帝国の一部になったり、フランスのノルマンディー公ギヨームによって征服されたりします。この時、イングランドの支配層はノルマン系フランス貴族に交代し、公用語もフランス語になります。

14世紀から15世紀にかけてフランスと「フランスに領土を持っていてフランス語を公用語とする王を抱くイングランド王国」との間に百年戦争が生じ、イングランド王国は最終的に大陸の領土をすべて失うとともに公用語が英語となります。百年戦争終結時に現在のイングランドの原型が構築されたということになります。

以前にご案内した英国最古の科学技術教育アカデミーのオックスフォード大学が創始されたのが12世紀で、イングランド王国がノルマン系フランス人に支配されていた時代です。フランスのパリ大学へのイギリス人の入学が禁止され、オックスフォードに学者と学生が集まったのが始まりとされています。

以上を鑑みると、同じ島国であってもイギリスは日本(の通説?)と異なって、異民族による征服や大陸との平和的・暴力的な交流が盛んに行われた場所であり、異国語が公用語(日本も漢文が政府公用語の時代がありましたが、、、)であったり大陸への留学が盛ん(日本にも遣唐使や日宋貿易などの交流もありましたが、、、)だった時代もあったということが理解されます。「大陸からの孤立」よりは「大陸からの脅威や大陸との交流」がかなり頻繁に意識された地域だったと思われます。

そのような中で、為政者に科学技術アカデミー設立(ないし支援)の意識が芽生えたのではないでしょうか。

また、イスラム教国が中東に控えていたのも日本と異なる要素かも知れません。以前にご案内したようにペルシャバグダッドには図書館を主体としたスクールが存在しました。元々はギリシャのプラトンやアリストテレスに始まるものではありましたが、、、。それらの考え方が大陸からイングランドにもたらされていたのかもしれません。

さらに、日本と異なるのはキリスト教の影響があったことでしょうか?ただし、オックスフォード大学創設の頃のキリスト教では修道院が主流で、(オ)の日本のインド式仏教寺院制度と類似だったと思われます。16世紀の宗教改革後は布教目的の学校制度が広がったようですが、、、。

ともあれ、「同じ島国のイギリスには12世紀に遡る科学技術アカデミーがあるのに対して、日本には幕末までそれが無かったとされるのは何故か」という命題に対しては、イギリスには「征服・被征服が繰り返された歴史があり為政者にも防衛意識が高かった」「大陸との文化的交流があり、その中でギリシャ・イスラムの伝統であるアカデミーの思想が持ち込まれた」などの要因があった、を回答とすることができるのかもしれません。

このシリーズの初回はこちらです。

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