
和辻哲郎著「鎖国」。こちらから転載させて頂きました。
本シリーズではリニアモーターカーの分析研究を進めています。
前回まではリニア新幹線の想定利用例のシミュレートする試みを三回ほど行いました。
残念ながら、筆者が考えた利用例では「のぞみ利用と比較して大幅に利便性が向上する」ということがありませんでした。筆者が気付かない効果的利用が秘められているのかもしれませんが、一般的鉄道利用者の一人としては首を傾げざるを得ない結果でした。
他方、ニア新幹線についてこれまで分析を行ってきた中で、交通システムとしての問題点がいくつか明らかになりました。以下に、それを列挙します。
【1】鉄輪式高速鉄道のフランスTGVと比較して試験走行での最高速が5%しか上回っていないため、国際的競争力に疑問符が付く。
【2】これまでの鉄道と比較して線路設備の比重が極端に大きく、鉄道性能の多くが列車ではなく線路で定まっている。このため、鉄道の改善は車両の改善ではなく「線路の改善」となってしまう。
【3】上記【2】に付随して、車両性能の改善努力が削がれる危険性に加えて、従来新幹線との相互乗入れ困難(ほぼ不可能)という硬直性が内在する。これらはこの鉄道の発展性を阻害する要因と思われる。
【4】磁気浮上のための超伝導磁石が車両内に多数積載されていて、それらがクエンチという一種の爆発的現象を抱える形態となっている。超伝導磁石の破損率は低くないと予想される。
【5】トンネル比率が80%以上という特異な線路形態のために、以下のような様々な問題が浮上している。
【5.1】トンネルは犯罪上の密室となる可能性があるため、従来鉄道に無いセキュリティ対策が必要となるという指摘があり、これが高速性のメリットを相殺する可能性がある。
【5.2】トンネル内の高速性を確保するために、従来新幹線と比較して内径の大きなトンネルとする必要があり、環境破壊の度合いを増大させている。特に、高山下のトンネルでは新オーストリアトンネル工法という保水層破壊能力が従来の一桁増しの方法を採用する必要が生じ、すでに水枯れ問題を発生させている。
【5.3】異常に長いトンネルの掘削により地中の有害成分(例えば、六価クロム)が「ずり」に含まれやすい。
【6】ターミナル駅となる予定の品川駅や名古屋駅では、現状で多くの線路が集約されているため、リニア新幹線のホームは相当に深い場所に建設される。これにより、従来鉄道との乗り換え時間が増し、乗客の利便性が失われる可能性がある。
以上を端的に表現すれば「骨折り損のくたびれ儲け」となる危険性が大いにあるリニア新幹線ということになります。これに重ねて大井川の水が損なわれれば「科学技術史上に目も当てられない技術的失敗の惨状例」が刻まれることになります。
第二次世界大戦の敗戦の惨状の中で和辻哲郎氏が指摘した近代日本人の性格的欠陥「やってみなくても予見できることを『やってみなくては解らない』と強弁して突っ走る組織結論の発生」が繰り返されないことを心から祈念しています。
このシリーズはこちらに続きます。また、このシリーズの初回はこちらです。
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