
ルーブル美術館にあるソクラテスの肖像(1世紀ローマ)。こちらから転載させて頂きました。
イマヌエル・カントはケーニヒスベルク大学の哲学教授時代に教育学の講義を受け持ったそうで、その内容を弟子がまとめた『教育学講義』(Lectures on Pedagogy)という書籍が存在します。
最近の教育論は多種多様のようですが、そちらは改めてご案内するとして、ここではカントの考え方に沿うことで教育の原点に立ち返って考えてみたいと思います。
まずは、悟性の育成です。カントの哲学において「悟性」(Verstand)は知性の核心的な能力とされるとのこと。本論では、科学技術的な感覚的経験(直観)を概念や科学技術的な規則の下に整理し理解する機能としています。
カントは、悟性の育成は子どもの発達段階に応じて段階的に進めるべきだと考えたようです。以下では、発達段階ごとのアプローチとして説明してみます。
1)幼少期(0~6歳頃)
この時期は感覚や直観が中心で、悟性は未発達なのだそうです。限定的ながら、感覚と概念の結びつけの基礎が形成されるようです。育成方法としては、具体的な事物や経験を通じて基本的な概念(色、形、大きさなど)を学ばせるとともに、規則や秩序の基礎を築くために一貫性のある生活習慣の指導も必要とのことです。
2)児童期(6~12歳頃)
論理的思考や概念的理解が発達し始めて、悟性の基礎が形成される時期とされるそうです。規則や因果性を理解する能力が育つ時期でもあるそうです。育成方法としては、学校教育を通じて、数学や自然科学の基礎を学ばせたり、規則や法則を具体例に適用する練習により論理的思考を強化するとよいそうです。また、ソクラテス的対話法で、子ども達が自分で考える機会を増やすことも重要とのこと(教え過ぎないことですな)。算数の問題や簡単な科学実験が有効とのこと。
3)青年期(12~18歳頃)※
抽象的思考が発達し、悟性が本格的に機能する時期で、複雑な規則や概念が理解され、それらに適用する能力が育つのだそうです。育成方法としては、数学、科学、哲学!などの学問を通じて悟性をさらに洗練させるとよい時期のようです。複雑な因果関係や抽象的概念を扱う訓練を行い、論理的・体系的思考を深める時期とのこと。実践的な問題解決を通じて、悟性を現実に応用する力を養うことも重要だそうです。代数や幾何学で抽象的思考を鍛えたり、歴史や科学の事例を分析し、因果関係や規則性の説明を試みさせることも有効とのこと。
※)上記が正しく、かつ、受験勉強が記憶偏重だとすると、悟性の育成を阻む弊害でしかなさそうですね(笑)。
4)成人期(18歳以降)
悟性が成熟し複雑な知識や経験を体系的に整理する能力が完成する一方、その発達は生涯続くとされるとのこと。育成方法としては、自己啓発や実社会での経験を通じて悟性をさらに強化したり、学問的探究や実践的な問題解決を通じて概念的思考を深化させるとよいそうです。On the jobトレーニングですな。
私が小中学生の頃の学校教育を、記憶に頼って辿ると、児童期の教育はまずまずカントの方針に類していたように感じます。自然に囲まれていたこともプラスに作用したように思われます。他方、青年期教育では受験勉強の弊害もあった上に、哲学や実践的問題解決の場面、歴史や科学の事例の分析などが圧倒的に少なかったように感じます。今の教育も同様であるとすると改善の余地は大きくあるように思われます。
このシリーズはこちらに続きます(新しく投稿されるとそちらに飛びます)。また、このシリーズの第一回目はこちらです。
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