
ルーブル美術館にあるソクラテスの肖像(1世紀ローマ)。こちらから転載させて頂きました。
本シリーズでは科学技術教育についての論考を進めています。
前回は、ソクラテス対話法をケンブリッジ大学チュートリアル制度並の頻度と深度を以て行うことについて論考しました。これを理想と考えるも、実現の困難さを論じました。
今回は実践されている(継続的な)ソクラテス対話法教育の例を見てゆきます。大いに参考となるものと考えられます。因みに、調査してくれたのはGROKさんです。
以下は単発の授業ではなく、複数回にわたる授業や年間を通じてソクラテス対話法を組み込んだ教育実践だそうです。中学生向けに焦点を当てて説明してくれました。
1)日本のJST「次世代科学者育成プログラム」(継続的授業)
日本科学技術振興機構(JST)の「次世代科学者育成プログラム」(SSP: Science School Program)では、中学校の理科教育にソクラテス対話法を組み込んだ継続的なカリキュラムが実施されているそうです。
対象:は中学1~3年生で、特に科学クラブや選択授業の生徒とのこと。1年間(週1回または月2回)の科学探究コースで、ソクラテス対話法を軸に授業を展開しているそうです。テーマ例としては 「エネルギー変換と効率」(例: 太陽光発電、熱エネルギー)が挙げられるとのこと。
継続性としては、学期ごとにテーマ(エネルギー→物質→生命)を変え、年間を通じて科学的思考を深めるのだそうです。また、「エネルギー効率の改善案」などを学期末に発表するとのこと。また、1年間のカリキュラムで、ソクラテス対話法を毎回の授業に組み込み、思考の深化を積み重ねるそうです。地域の科学館や大学と連携し、専門家との対話も実施するとのこと。
成果としては、生徒の科学的思考力(仮説構築・検証)が向上し、3年間のプログラム参加者の全国模試(理科)の平均点が非参加者に比べ10-15%高く(JST評価)、生徒の「なぜ?」を追求する姿勢が定着したそうです。
身近なテーマ(例: スマホの充電、エコハウス)で興味を維持したり、グループ討論を毎回取り入れ、発言しやすい環境を構築したりという工夫を取り入れているとのこと。また、学習日誌などによる継続的なフィードバックで、生徒の思考の進展を可視化しているそうです。
2)国際バカロレア(IB)MYPの理科カリキュラム※
※)国際バカロレアとはスイスのジュネーブで設立された非営利団体。国際的な教育プログラムを提供し、世界共通の大学入学資格(国際バカロレア資格)を授与するとのこと。
国際バカロレア(IB)のMiddle Years Programme(MYP、11-16歳向け)を実施する日本のインターナショナルスクールや一部公立校で、ソクラテス対話法を理科教育に継続的に導入しているそうです。
継続性としては、5年間のMYPカリキュラム内で、理科の授業(物理・化学・生物)にソクラテス対話法を毎週または隔週で適用するとのこと。「物質の構造と反応」「生態系のバランス」などをテーマの例として、単元ごとの対話を実施するそうです。「化学反応」を単元とする例では、教師が「酸と塩基が反応すると何が起こる?」「その証拠は?」と質問し、生徒の理解を深めるのだそうです。
ソクラテス対話法を「観察→質問→仮説→検証」のサイクルに統合するそうで、年間を通じた探究課題(例: 「地域の水質調査」)でもソクラテス式質問を繰り返し使用するとのこと。「このデータは何を示す?」「他の要因は考えられる?」と議論を深めることも行うそうです。
成果としては、生徒の批判的思考と科学的リテラシーの向上が見られたそうで、IBの評価(探究スキル)ではソクラテス対話法を使用したクラスのスコアが平均15%高かったとのこと(学校内データ)。生徒が自主的に研究テーマを提案する例が増加したそうです。
グローバルなテーマ(例: 環境問題)を扱い国際的視点を養う、対話をゲーム感覚(例: 質問リレー)で進め楽しさを強調する、ポートフォリオで思考の進展を記録し継続性を可視化する、などの工夫を加えているそうです。
⇒「5年間のカリキュラム」ということは中高一貫が前提でしょうか?
いずれもよく考えられた教育方法と感じ入りました。ですが、本シリーズの出発点である「科学技術的知性の育成方法」という観点からは、方向性がすこし違うかもしれないと感じました。スキルや経験値を向上させる手法であり、それらが基本であることは間違いないのですが、、。また、教育手法の評価がペーパーテストの点数となっている点も少し気になりました。「現場」との繋がりはどの程度に確保されているのかという点も。
このシリーズはこちらに続きます(新しく投稿されるとそちらに飛びます)。また、このシリーズの第一回目はこちらです。
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