
「車重を支える」ための力学的経路の一覧。

リニア新幹線の超伝導磁石。宮崎実験線で用いられていたもの。こちらから転載させて頂きました。

リニア新幹線で用いられる超伝導磁石の説明図。右下に「荷重支持材」とあります。こちらから転載させて頂きました。
本シリーズではリニアモーターカーの分析研究を進めてきました。
前回の「これが最後:一点突出性能をどう見るか」で終了する予定でしたが、その後の入浴中に思いついたことがあり、今回はそれを紹介する「追補」としました。お付き合いください。
湯船に浸り浮力を感じながら念頭に浮かんだのは「リニア新幹線では車体の重さや振動を如何様に支えるのか?」という疑問でした。
まずは、おなじみの従来型鉄輪鉄道(例えば、東海道新幹線の「のぞみ」)の場合を整理してみます。
乗客としての我々が座ったり立ったり歩いたりするのは客車の「車体」という部分です。
それを支えるのは、おそらく、サスペンションを介していると思われますが、「台車」という部分です。
台車には「車輪(鉄輪)」と「車軸」が備わっていて、両者ともに車体と台車の重さを引き受けます。
車輪は「レール」と接して以上のすべての重量を引き受けます。
運転時の車輪と車軸は高速で回転しますので「軸受け」が必要となります。おそらくは特殊なベアリングが用いられていると想像されます。
他方、駆動力を発生する電動機(モーター)は「車重」と直接に関係しません。自動車のエンジン・トランスミッションと同じように、動力発生に専念するはずです。動力はギアなどで車軸に伝わるはずで、電動機内のコイルに加わる力は加減速の力のみです。車重による重力は加わりません。
ですので、車輪、車軸、軸受けが頑丈であれば、時速300㎞の高速運行およびその際に発生する強烈な振動に対しても「すぐに壊れる」ということは無いはずで、実際、従来型新幹線の信頼性の実績は高いものとなっています。
さて、リニア新幹線ではこの「車体と台車の重さを支える」部分はどうなっているのでしょうか?
これを上掲の表にまとめてみました。鉄輪式高速鉄道では構成要素のすべてが常温(室温)が基本でしたが、超伝導リニアではいわゆる「極低温」が関与します。この「温度の特殊性」も表の欄一つとして加えました。
「車体」と「台車」までは従来型鉄輪鉄道のそれらと似たようなものと考えられます。温度も常温です。
従来のレールのに相当するのが表の最下蘭の「ガイドウエイ」の「浮上・案内コイル」です。これも常温です。
従来型鉄輪鉄道ではレールと車輪が接触していましたが、超伝導リニアでは非接触で磁界が車両側のすべての重量を支えることになります。
ガイドウエイの浮上・案内コイルには相当の耐久性が求められるはずです。後述する「コイルで車重を支える」という懸念がここにもありますが、常温なので「何とかなる」と考えることにします。
ここまでは良いとしましょう。私の疑問はそれらの中間にある超電導コイルとそのコイルの保持機構がどうなっているのだろうかという点にあります。
リニア新幹線の車両には鉄輪式高速鉄道の車両との明らかな相違点が二つあります。
1)磁界を発生させる超伝導コイルが車重を受け持つ
2)超伝導コイルを極低温に保持する必要がある
(1)については、コイルは繊細(で特殊)な電線を何重にも巻いてある構造物であることが注意喚起されます。鉄輪式高速鉄道ではコイルが車重を支えることはありませんでしたが、超伝導リニアではコイルに車重が直接加わります(※)。
※)精緻な調査が必要ですが、中国で運行中のHSST型リニアモーターカーでは車重を支えるのは常温の電磁石で、しかもコイルではなく鉄芯が車重を支える構成となっているようです。従って、コイル自体が車重を支える構成はリニア新幹線が最初ではないでしょうか?
(2)については、極低温実験を経験した人ならば理解頂けるかと考えますが、コイルを極低温に保つためには、コイルを保持する機構に「真空」や「複数の冷媒」や「熱伝導率の低い素材・構造」が必ず必要になります。一般に、真空のための構造、冷媒のための構造、低熱伝導率素材にはデリケートなものが多く、鉄輪式の車軸や軸受けとは技術的に全く異なる世界の産物です。強度や耐久性に課題のある構造と換言してもよいかもしれません。
コイル素材やコイル冷却方法に新しい方式が検討されているようですが、、、。
私には超電導コイル保持機構の「耐久性」と「低熱伝導率特性」は二律背反のように思えてなりません。
超電導コイル保持機構の耐久性を十分に高くする場合には、極低温を保つための電力や保冷剤が多量に必要になる。極低温の維持を優先するならば、超電導コイル保持機構の強度を抑える必要がある。
ここで、超伝導リニアに用いられる超伝導磁石の実際を見てゆきましょう、、、としたいのですが、ネット上の情報を見出すことがあまりうまくいきませんでした。
ネット上で見出した三種類のイメージを上掲しました。一番上は実験線が宮崎県にあったころに用いられていた超伝導磁石の展示物です。外槽の一部が透明プラスチックとなっていて超電導コイルを覗くことが可能となっています。
実験線が宮崎県から山梨県に移ったのが1996年で現在から30年前となります。現行バージョンは、おそらく、進化していると想像されますが、二番目と3番目の図と大きな差は無いようです。前者は山梨県立リニア見学センターHPにあるもので、後者はリニア中央新幹線のHPにあったものです。
山梨県立リニア見学センターHPの図では「荷重支持材」が明示されていますが、輻射シールド板と同じ色で描かれています。頑丈そうには見えないのは私だけでしょうか?他方、リニア中央新幹線HPの図にはコイル保持機構自体が描かれていません。
リニア新幹線はのぞみの時速300㎞を大きく上回る時速500㎞での走行が想定されています。ガイドウエイの浮上・案内コイルの平坦性も完璧ではないはずですし、風圧に依る車体の上下動もあるはずです。車体の静的な荷重に加えてこれらの振動成分が超伝導コイルおよびコイル保持機構に加わるのですが、1編成に256個ある超電導コイルとその保持機構は十分な耐久性を発揮できるのでしょうか?
謎です。
このシリーズの初回はこちらです。

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