LB15: 連載「無法者」15_ドイツの全権委任防止策

(抜粋)ヒトラーが独裁体制を築くために制定した全権委任法(=憲法改正法)。現在のドイツの制度がこれを如何様に防止しているのかを調べてみました。

ドイツ連邦憲法裁判所の法廷での口頭審理(1974年11月)。こちらから転載させて頂きました。

 昨今、法律を無視して我が道を押し進もうとする輩が日本でも様々な階層で増えている状況を嘆き、このシリーズを始めました。

 最終的には無法者の対処方法を歴史に学ぶことができれば自身に合格点を与えたいと考えています。

 ここ何回かは、ヒットラーという無法者を国のトップに仕立ててしまったドイツが、制度改革を成し、大統領公選制(権限を抑圧された大統領を間接選挙で選出する)を採用して今日に至っていることを俯瞰し、さらにはヒトラーが国のトップに立ってしまった経緯において致命的だった大統領のヒンデンブルクの判断と権限行使を調べました。

 85歳だったヒンデンブルク大統領が「ヒットラーを操ることができる」と、どこかの国で見たような、判断間違いを犯し、自らの大きな権限「首相任免権」を行使してしまい、全権委任を立法させてしまった、、これが大まかな経緯です。

 現在のドイツ大統領の権限は相当に圧縮されており、高齢の大統領の個人的判断(あるいはその周囲の判断)だけで勝手に首相を任命することは無いようです。

 他方、ヒットラーに独裁を許した全権委任法については調査が甘く、また現在のドイツの政治システムが如何様に全権委任を防止しているかを調べる価値があるとも感じました。

 例によってChatGPTに質問する形で調査を進めました。

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0)はじめに
 現在のドイツ基本法は、「1933年の全権委任法」が成立した原因を一つ一つ分析し、それぞれに対する歯止めを設けているそうです。

  単一の規定で防いでいるのではなく、複数の制度を組み合わせて「独裁への道」を封じているとのこと。

1)1933年の全権委任法が成立した理由
 当時の流れは次のようだったそうです。
(1)(1932年の2回の選挙で)ナチ党が第一党となる(過半数には達せず)。
(2)ヒトラーが首相に任命される。
(3)国会議事堂放火事件が起こる。
(4)緊急大統領令※で基本的人権が停止される。
(5)共産党議員※※が逮捕・排除される。
(6)SA(Sturmabteilung:突撃隊)※※※が議場周辺を威圧する。
(7)全権委任法が3分の2以上の賛成※※※※で可決される。
 つまり、「議会が自ら政府へ立法権を譲渡した」ことが決定的だったそうです。
※)ワイマール憲法第48条には「公共の安全と秩序が重大に脅かされた場合、大統領は必要な措置を命じることができる」という規定があり、大統領は緊急令を出す権限を持っていたそうです。ヒトラー内閣が緊急令を起草し、大統領ヒンデンブルクが署名・発布したという経緯だったとのこと。
※※)共産党はナチ党にとっての最大の政敵だったようです。次の全権委任法を採決する際に共産党議員(=反対票)の排除が必要だったようです。
※※※)sturm:嵐、abteilung:部門
※※※※)ワイマール憲法では「法律を制定するのは国会(ライヒスターク)」であり「政府は法律を勝手に作れない」という議会制民主主義が採られていたのに対して、全権委任法は「政府(ヒトラー内閣)が国会の議決なしに法律を制定できる」と定めたそうです。しかも、その第2条には「政府の制定する法律は、憲法に違反する内容であってもよい」という趣旨が込められていたそうです。ワイマール憲法の形骸化ですね。3分の2以上の票決が必要だったのは「全権委任法」が「憲法改正法」だったためのようです。ナチ党は議会の3分の2以上を占めていませんでしたが、嘘八百で野党を丸め込み、反対派の共産党などは緊急大統領令で排除したようです。

2)現在の基本法の歯止め
(ア)立法権は議会に属する
 現在の基本法では、法律を制定する権限は連邦議会にあると定められているそうです。
 政府が議会に代わって自由に法律を制定することはできない※とのこと。
※)この点はワイマール憲法も同様だったように思われますが、、。
 1933年のように「今後4年間、政府が法律を作ります」という法律を作ることは、憲法上極めて困難なのだそうです。

(イ)永遠条項
 これが最大の防波堤なのだそうです。

 基本法第79条第3項※(いわゆる永遠条項)は、「次の原則は改正できない」と定めているそうです。
※)第79条第3項自体の永遠性は「解釈」に依拠しているそうです。ただし、この「解釈」の強固度合いは様々な方策で高められているようです。

 例えば
・人間の尊厳
・民主主義
・法治国家
・連邦制
・基本権の本質
・国民主権
など。

 したがって、たとえ議会議員の100%が賛成しても

「議会は立法権を政府へ渡す」

ような制度は、民主主義そのものを破壊するため違憲※となる可能性が極めて高いと考えられているそうです。
※)違憲を容認するようではだめですね。違憲を行政や立法、さらには司法が犯した場合の措置は、「ドイツ>>日本」※※のようです。
※※)ドイツの憲法裁判所は違憲法律を無効とし適用を停止する権限を持つそうです。また、違憲行政については行政処分が取り消され、国が損害賠償責任を負うことになっているそうです。

3)連邦憲法裁判所
 戦後最大の改革の一つだそうです。

 戦前には違憲立法を最終的に無効にする強力な憲法裁判所は無かったそうです。

 現在は、ドイツ連邦憲法裁判所が違憲法律を無効にできるとのこと。

 もしも「政府へ立法権を委任する法律」が成立しても、憲法裁判所が違憲と判断すれば効力を失うそうです。

4)緊急事態でも議会は消えない
 現在の緊急事態条項※では、政府の権限は増えるものの、議会は存続するそうです。
※)ドイツ基本法には緊急事態条項があるようです。

 ヒトラー時代のように「緊急事態だから議会は不要」とはならないそうです。

5)建設的不信任決議
 これにより「内閣が次々倒れる⇒大統領が非常権限を乱用する」というヴァイマル共和国型の政治危機が防がれているそうです。

6)政党にも憲法を守る義務
 ドイツでは民主主義を破壊しようとする政党は連邦憲法裁判所の判断により禁止※されることがあるそうです。
※)二つの前例があるそうです。違憲判断を下された政党は解散(活動禁止)となり、下部組織も解散。党の財産は没収され、公的目的に充てられることがあるそうです。その政党名で活動を継続することは認められないとのこと。

 これは「民主主義は、自らを破壊する勢力に対して無防備ではならない」という考え方で、「戦う民主主義(wehrhafte Demokratie)」または「防衛的民主主義」と呼ばれるそうです。

7)最大の違い
 1933年と現在の最大の違いは

「憲法より上に立てる政治家が存在しない」

ことだそうです。

 ヒトラーは全権委任法によって政府が憲法に反する法律まで制定できるようにした※ようですが、現在は誰であっても基本法より上には立てません。
※)政府、すなわちヒトラーが憲法の上に立ったということですかね。

 ドイツ憲法学では、ヴァイマル憲法は「価値中立的な民主主義」だったとされ、民主主義そのものを壊す政党であっても、民主的手続で政権を取ることが可能だったとのこと。

 これに対して現在の基本法は「価値拘束的民主主義(または「戦う民主主義」)」であり、

民主主義は、自らを破壊しようとする勢力に対して一定の防御を行うことが正当である

という立場を採っているとのこと。

 そのため、現在のドイツでは「国会が政府に無制限の立法権を与え、憲法を事実上停止させる」という1933年型の全権委任法は、永遠条項・憲法裁判所・議会制・基本権保障という複数の制度によって、法的にも制度的にも成立しないよう設計されているそうです。

《《《《《《《《ここまで《《《《《《《《

 ドイツは、ヒトラーの反省から民主主義が破壊されないような防波堤を幾重にも備えた基本法(憲法)と制度を備えたようです。

 違憲を放置せず、法律を無効にしたり行政処分を取り消したりする力を有する連邦憲法裁判所は特に強力です。

 それらが何時・どのように制定されたのか、とても興味が湧きます。

 次に続きます。

 このシリーズの第一番目のポストはこちらです。同じく前回ポストはこちら、次回ポストはこちらです。

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