19cw012: 19世紀の戦争_012 フランス革命戦争_10 金融の非線形性で再戦争

1810年頃のロンドン証券取引所。こちらから転載させて頂きました。

「戦争を無くすためには戦争の本質を理解する必要がある」という考え方に立脚して本シリーズに着手しました。

前回は「イギリスの戦費調達のための戦争国債が如何様に返済されたか」を俯瞰しました。

その際の疑問「金融システムによる戦費の払底が同じ金融システムによって1年で回復されるものなのか?」は氷解しませんでした。

今回はこの点の解明を試みます。

ChatGPTに尋ねたところ、「なるほど、その疑問は非常に核心をついています。確かに『たった1年間の財政赤字縮小だけで、長期戦を支える国債を売れるようになる』というのは直感的には理解しにくいです。ここにはいくつかの経済・金融構造上のポイントがあります。」とのことでした。以下で回答概要をご案内します。

1.1802年時点の「国債が売れなかった理由」と「信用の回復」について
国債が売れなかった主な理由は、
A)長期戦で債務が膨張し、返済能力に不安があった
←国債残高の累積と利払い負担で財政が逼迫←投資家は「さらに借金しても利息は払われるか?」と疑心暗鬼
B)戦争継続で支出が非常に高く、赤字が拡大していた
←毎年の財政赤字が市場心理を悪化させ、利回りが高騰(=借りにくい)
C)市場の流動性の低下
←戦争で安全資産への需要が増える一方、リスクを取る余裕がない
⇒ この状態では「どれだけ国債を出しても買い手がつかない」状態になっていたそうです。

2.1年の和平で「なぜ信用が回復したのか」
信用が回復したのは、単に赤字が減ったからではなく、
A)戦争リスクの停止
⇒平和により「将来的に戦争費がさらに膨張する」という不安が消えた
⇒投資家は、少なくとも1~2年は政府が利息を払えることを確認できた
B)財政構造の改善
←軍隊・艦隊費用の大幅削減
←外国援助(オーストリアなど)停止
←赤字縮小 ⇒借入に対する金利(利回り)低下
⇒投資家にとって「国債は買っても安全」という心理が生まれる
C)金融市場の信頼回復
⇒ロンドン金融市場は非常に流動性が高く、少しの信用回復でも大規模資金調達が可能
⇒戦争が止まったことで、金融市場に「政府が踏み倒すリスクは減った」と認識させることができた

3.要点の理解:信用の非線形性
重要なポイントはここなのだそうです。信用は「財政赤字の絶対額」ではなく、「将来返済できる確信」によって決まるとのこと。
戦時:赤字が大きく、返済能力に疑念 → 国債が売れない
和平:赤字が一時的に減る、支出予測が安定 → 投資家の心理が改善
この心理改善によって、国債は数倍〜数十倍の規模でも売れるようになるのだそうです。
つまり、信用は線形ではなく、「危険ラインを超えるかどうか」のスイッチのように機能します。赤字が1年分減っただけでも、投資家心理が「安全圏に戻った」と判断すれば、巨額の国債を購入できるのだそうです。

4.補足:イギリス金融システムの特性
国債を担保にさらに借金(レバレッジ)可能
投資家層が巨大で、少しの安心で一気に需要が回復
海軍力・貿易収入で「返済能力の裏付け」がある
》》⇒ この構造があったから、和平1年で「再び長期戦用の資金調達が可能になったそうです。

個人的には「和平で借金を容易にしておいて次の戦争を開始する」のは詐欺行為のように思われるのですが、読者の皆様はどのように理解されるでしょうか?

いずれにしても、ロンドン金融市場はイギリスにナポレオン戦争への宣戦布告を可能とさせます。

所謂「金融市場の非線形性」が戦争の連続を可能とさせたと言えるのでしょうか?

最近もやたらに「停戦、停戦、停戦」という声が上がりますが、この非線形性と関係があるのでしょうか?

ちなみに、フランス革命戦争の終結を示すアミアンの和約が交わされる前年の1801年にロンドン証券取引所が開設されます。オランダのアムステルダム証券取引所に遅れること約200年でしたが、世界で二番目に早い開設だったようです。

次回はフランス革命戦争の「庶民にとっての」結果を俯瞰します。

このシリーズはこちらに続きます(新しく投稿されるとそちらに飛びます)。また、このシリーズの初回はこちらです。「フランス革命戦争」ミニシリーズの初回はこちらです。  

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