19cw020: 19世紀の戦争_020 ナポレオン戦争_7 民間軍需企業の具体例

産業革命を支えたジェーム・ワットの蒸気機関。ジョン・ウイルキンソンは蒸気機関実用化に貢献する一方で殺りく兵器も生産していました。こちらから転載させて頂きました。

フランスのナンシーにある「アルザスの喪失を母と娘の別れとして象徴」する像。鉄資源が豊富な地域は領土争いの対象となり続けたようです。こちらから転載させて頂きました。

「戦争を無くすためには戦争の本質を理解する必要がある」という考え方に立脚して本シリーズに着手しました。

前回はナポレオン戦争(1803年~1815年)当時の軍需産業を概観しました。

今回はもう少し踏み込んで当時の民間軍需産業の具体例を見てゆきます。「戦争が必要な人間」にならないための基礎知識とお考え下さい。


1)イギリスに実在した民間軍需企業
》イギリスでは民間企業が主役だったため、それらの具体名が多く残っているようです。

1-ア)キャロン社(Carron Company(前出です))
》1759年にスコットランドのファルカーク近郊に設立された株式会社に近い合名会社とのこと。
》鉄製大砲やカロネード砲(Carronade)を製造した、海軍用大砲の最大手の一つだそうです。カロネード砲は軽量で近距離で強力、ナポレオン戦争期の艦砲戦に革命を起こしたと言われるとのこと。民間が発明・量産し、国家が採用したという代表例となっているようです。

1-イ)ウィルキンソン家(Wilkinson)
》経営者はジョン・ウィルキンソンで、ミッドランド地方(バーミンガムを含む)で家族経営の鉄工業を営んだそうです。
》大砲用の精密中ぐり加工に優れ、銃砲の品質向上技術も開発したそうです。ジェームズ・ワットの蒸気機関に用いられたシリンダーの加工でも有名とのこと。兵器製造技術が産業革命技術へ波及した一例であり、軍需と産業革命を結ぶ存在だったようです。

1-ウ)バーミンガム銃工業の請負業者群
》代表的業者名としては、Galton & SonsKetland & Co.、Farmer family※ などが挙げられるようです。
※)James FarmerはSamuel Galton seniorの義父のようです。
》マスケット銃(ブラウン・ベス)※や銃部品(銃身・撃鉄・銃床)を製造したそうです。
※)司馬遼太郎の明治維新関連作品に頻出しますね。明治維新のころのイギリスではすでに使用終了状態だったようですが、、、。
》数百~数千の職人ネットワークを体制とし、国家と数量契約を結ぶ「元請け企業」という形態だったようです。事実上の「民間軍需コンソーシアム」とのこと。

1-4)ブラウン商会(Boulton & Watt の関連企業)
》直接の兵器製造は行わないが「武器を作る企業を支える軍需企業」だったとのこと。
》軍需工場・造船所向けの蒸気機関や造兵能力そのものを支える装置を製造していたようです。


2)フランスに実在した民間軍需企業
》フランスでは「国家工廠」が前面に出たため、名目上は民間、実質は国家統制という企業が多いようです。

2-ア)ル・クルーゾ製鉄所(Le Creusot)
》1782年創設の製鉄業で、経営は民間だが国家の関与は強かったそうです。
》大砲や砲身・弾薬用の鉄材を生産していたとのこと。ナポレオン時代の最大級製鉄所で、原料配分・価格・生産量は国家が決定した「民営だが国家の兵器工場」だったようです。

2-イ)シュナイダー家※以前の民営兵器鋳造所(アルザス・ロレーヌ※※)
※)1836年に上記Le Creusot(炭鉱地域)に製鉄会社を設立した一家。
※※)鉄資源が豊富な地方。
》ストラスブール周辺に存在した経営は民間、技師は国家派遣、完成品は全量を国が買い上げという兵器鋳造所で、野戦砲や砲弾を生産していたようです。

2-ウ)サン=テティエンヌの銃工業者(民間時代)
》革命前は完全な民間ギルド都市だったようですが、ナポレオン期に「企業としては解体、労働力だけ残存」となったため「工場は国家管理で、職人は元民間人」と変質したようです。
》マスケット銃や銃剣を生産していたとのこと。

2-エ)海軍向け請負商人(ネゴシアン
》マルセイユやボルドーの商人たちが艦船そのものは作らないが必需品を製造・供給していたようです。
》帆布、ロープ、食料、制服などが対象だったとのこと。


現代にも続くイギリス社会とフランス社会の差異が、ナポレオン戦争時代の軍需企業に現れていたようです。


次回は、「戦争で巨万の富を得た軍需企業家」と「ナポレオン戦争後にこれら企業がどうなったか」を見てゆきます。

このシリーズはこちらに続きます(新しく投稿されるとそちらに飛びます)。また、このシリーズの初回はこちらです。「ナポレオン戦争」ミニシリーズの初回はこちらです。他のミニシリーズの初回は以下の通り。
・「フランス革命戦争」  

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