
仁王門西南側の彫刻木鼻(きばな)。吽形です。

木鼻周辺の斗栱(ときょう)など。

東南側の彫刻木鼻。阿形です。
このシリーズでは大日山瞰川寺の境内にある石碑石像と建築物をひとつひとつご案内しています。
今回は山門を兼ねる仁王門の四回目です。
前回は仁王門の鬼瓦に形作られた蔦の寺紋とそれが弘法大師や空也律師との関係を強く示す旨をご案内しました。
今回は木鼻の彫刻を見てゆきます。
木鼻とは「柱を貫通する頭貫(かしらぬき)・肘木(ひじき)・虹梁(こうりょう)の柱から突き出た部分のことである」とのことです。が、大日山瞰川寺の仁王門の木鼻の構造は少し異なるようです。
というのは柱の面から45度の方向に突き出ているからです。おそらく、装飾性が重視されて円柱に後付けされたのではないかと思われます。
ChatGPTによると、大日山瞰川寺の仁王門の木鼻は、江戸時代後期(1800年頃)の仁王門に典型的な意匠がよく表れているそうです。
1) 力強く写実的な彫り(江戸後期的特徴)
木鼻の彫刻は、量感があり深く彫り込まれているとのこと。
特に顔まわりや渦状の表現は、立体感と動勢を強く意識した作風で、江戸後期に流行した写実性・迫力重視の傾向が見られるようです。
2)獅子(または獏・霊獣)系の意匠
形状から見ると、大きく張り出した鼻先、渦を巻く鬣(たてがみ)状の彫り、口元に力の入った表情が窺え、獅子系霊獣の木鼻に多い特徴とのことです。仁王門では、一般に、邪気を払う意味を持つ獅子・霊獣の木鼻が好まれたようです。
3)雲形・渦文様の装飾性
彫刻の周囲には、雲形や渦巻き文様が多用されていて、単なる装飾ではなく、仏教的な「霊気」「天界」を象徴、建築部材の角を和らげたり、視覚的に流れを作ったりという役割を持つようです。
また、木鼻・斗(ます)・肘木・梁(はり)が彫刻的に連続しており、建築全体を一つの造形として考える発想が見られるため、地方寺院ながら経験豊富な駿河の宮大工系譜を感じさせるそうです。「技量の高い地方宮大工が、寺格に見合う最上の仕事をした例」ともいえるとのこと。
4)経年変化が生む味わい
木地仕上げのため、雨風による自然な退色、木目の浮き出し、彫りの陰影が強調といった時間が生んだ表情があり、江戸期建築らしい落ち着きと風格を感じさせるそうです。
5)駿河・遠江地方に見られる「力彫り」の系譜
静岡県(特に旧駿河国と旧遠江国)では、江戸後期に深彫りで量感のある彫刻(いわゆる「力彫り」)が好まれたそうです。
大日山瞰川寺の仁王門の木鼻も、「彫りが浅く線的」ではなく、面が強調されていて、鼻先・頬・鬣が塊として迫り出す造形となっており、関東彫刻の影響を受けつつ、地方大工が昇華した様式と見られるようです。
関東的な勇壮さ(獅子の力強さ)と上方系の柔らかな雲形処理が同時に見られ、「東海道型木鼻」と呼べる折衷的な性格があるとのこと。
6)材の選択と耐久性
駿河國では、杉・檜の良材が入手しやすく木目を活かした無彩色仕上げが主流だったそうで、大日山瞰川寺の仁王門の木鼻も木目がはっきり残ること、彫刻の角が完全に丸くならず残っていること、などから良材を高い彫刻技術で仕上げたと考えられるようです。
総括すれば「地方作ながら完成度の高い優品」と言えるようです。
さて、ここで、西南側の木鼻と東南側の木鼻を比較してみましょう。
東南側の木鼻の表情の特徴は、口元がやや開き気味、鼻先が前に突き出る、目元の緊張が強く、動き出す直前のような表情であり、典型的な「発する力」「始まりの気」=阿形を象徴する表現とのこと。
対して、西南側木鼻の特徴は、口元が引き締まり閉じ気味、受け止める・収めるという雰囲気、鬣(たてがみ)はまとまり重視で、「静」の気配。典型的な吽形の表現だそうです。
これらは仁王像と対応します。東側の仁王像は阿形、西側の仁王像は吽形です。
ただし、駿河地方らしい「控えめな阿形」の阿形木鼻のようです。大きく口を開かない、牙を強調しない、表情が過剰に荒れないという特徴があるとのこと。駿河地方の寺院に多い「阿形でも荒々しさより品位を重視する」という地域性をよく示しているそうです。
なお、木鼻は北東と北西にもあり、それぞれ、阿形と吽形となっています。
とまれ、仁王像(阿・吽)、木鼻(阿・吽)、門全体の左右構成が思想的にも造形的にも統一されているのが大日山瞰川寺の仁王門ということになります。江戸後期の地方寺院で、「阿吽の思想」を末端部材まで徹底している例は決して多くないそうです。
普段は何気なく通過する仁王門ですが、細部に江戸後期の高度な意匠と統一性が施されていると感じ入りました。
このシリーズはこちらに続きます(最新記事がアップされたらそちらが表示されます)。また、本シリーズの初回はこちらです。
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